Peruki's Blog
技術や生活に関する記事を載せています
この記事は、FUN Part2 Advent Calendar 2023 4日目の記事です。
3日目の記事
戦略論をFPSに応用する〜VALORANTを例に〜 by かずお
アクセス修飾子を意識するために by シルロナ
4日目の記事
ぺるきです。X: @PerukiFUN
今年9月18日、LTイベント「函館市電LT」を開催しました。
これは文字通り、函館市電の車両内でライトニングトークを行うイベントです。
ライトニングトークとは... 技術系のトピックを中心に、自分の好きなテーマや関心事について、5~10分程度のプレゼンテーション形式で発表する交流会です。(Mariners' Conferenceへようこそ - Scrapbox より)
函館市電の車両を1台貸し切り、前代未聞の環境でLTイベントを展開します。
このイベントは開催の主体となる未来大生だけでなく、高校生や社会人、さらには札幌や東京からの参加者も巻き込んだ異色の技術イベントとなりました。
雰囲気や発表の内容については、ハッシュタグ #函館市電LT ポストを見ていただくとよいです。LTにしてはあまりにもアトラクションすぎることがわかります。
イベント自体はもちろん、運営の流れも非常に特殊なものとなったので、何かしらの形で残しておきたいと思っていました。少々遅れ気味ではありますが、運営視点で本記事にてまとめていこうかと思います。
函館市電LT自体は僕が考えたものではなく、Jugesuke君 (X: @jugesuke)からの提案でした。
以前から技術系の友人の間で「頭のおかしいLTをやりたいよね」という話をしていて、いろいろな案が上がっていました。僕が推していたのは「初山別村LT (真冬の初山別村に行ってLT)」だったのですが、誰も行けないと批判されてしまいました。妥協策として「奥尻島LT (真冬の奥尻島に行ってLT)」も提案していましたが、これも誰一人前向きに検討してくれませんでした。
なにかいい案がないか、と考えていたのですが、そこでJugesuke君が「函館市電でのLT」と「特急北斗でのLT」の2案を出してきました。実際この2つは、まとまった金額を出せば車両を貸し切りすることができ、LTするにも十分なスペースがありました。
▲市電の貸し切り費用 (参照: https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014012101004/)
特急北斗については、貸切費用の高さもあり、LTの開催は現実的ではありませんでした。一方で、函館市電はなんと20,000円で1運行ごと借りることができ、他の案と比べると相当現実的でした。最終的にこの案を採用し、開催に向けた工程を進めていくこととなります。
なお、この函館市電を貸し切るというアイデアは、Jugesuke君自身が発案したものでもなく、おおもとは「流氷交差点」というポッドキャストで語られた内容にあるようです。
Code for Hakodate中村さんのいつかやってみたい『乗り物系LT大会』2つ
「流氷交差点」は、北海道と東京都小平市を中心に技術系の幅広い活動をされているtomio先生(X: @tomio2480)が、技術系イベントを盛り上げる人々から話を聞き、コミュニティ・IT・ものづくりについての知見を共有するプロジェクトです。その回の一つとして、道南で多くの技術系活動を開催・支援しているジャンボ先生(X: @jumbo_hakodate)の回がありました。そこで、ジャンボさんが面白LT大会として、函館市電およびリムジンでのLTの構想に言及していました。
実は、このことを僕自身が知ったのは開催終了後で、結局は僕が勝手に開催にこぎつける形になってしまいました。にもかかわらず、ジャンボ先生には、今回の函館市電LTの運営メンバーの一人として様々な形で支えていただきました (それについては追々述べます)。
▲tomio先生と焼肉や中華を食べたこともあるよ
とにかく、そういった経緯を経て、函館市電LTの計画が始まります。
最初に、自分の構想を詰めるだけ詰めた企画書の作成を行いました。
夏だ!市電だ!LTだ!
スライドにかけた青春、感動の夏が君を待っている!
こんな企画書をチラつかせてはXを中心に大々告知を行い、運営メンバーの希望者を募りました。
ここでいう運営メンバーは、イベントの運営に際して何かしらの役割を担ってくれる人を指します。こういったイベント運営、ワンオペだとタスクが山積みで崩壊するし、とはいえ関係者全員で運営を進める形式だとコミニュケーションコストが爆発して崩壊するので、自分の開催するイベントでは基本3-4人くらいに絞って運営を進めるようにしています。
運営メンバーは基本的にボランティアになるので、多くの希望者が出るよう、可能な限り企画を具体的かつ魅力的に提示する必要があります。実際、このイベントでは企画の広報にかなり力を入れたため、最初のミーティングまでに多くの人が集まってくれました。中には九州から来た人(!?)も運営メンバーに名乗り出ていただき、connpassの制作など協力いただきました。
その後、運営メンバーを希望した方々を集め、最初のミーティングを行うこととなります。
最初のミーティングでは、運営メンバーの確定と役割の分担、おおまかな時期の確定を行いました。
準備にあたっては、遠方からの来訪者を想定している上、市電を貸し切る手続きも必要だったことから、できるだけ早期に日付を決める必要がありました。実際、最初のミーティングを行った6月の時点ですでに必要なタスクもいくつかありました。
このイベントでは、重いタスクも徹底的に役割分担して他の人に回しています。過去のイベントではたいてい、重いタスクを(主催者としての責任感から)自分で一手に担い、結局崩壊していました。そのため、準備にあたってはとにかく役割分担を徹底していました。
結果、市電を貸し切る手続きさえも他の人に委譲しています。市電の貸し切り手続きは、ジャンボさんに尽力していただきました。本当に助かりました。
函館市電LTは最終的に、初めての異常な取り組みでありながら、全体を通してほとんど計画通りイベントを開催できています。このことは、やはりこのとき心がけた徹底的な役割分担に起因しているのではないかと思います。(もちろん、その根底には運営メンバーの方々の尽力があります。本当に感謝しています。)
その次、ジャンボさんの交渉により、なんと市電の車両を見学させてもらえることとなりました。自分はじめ多くの運営メンバーにとって、駒場車庫への初潜入となりました。本当に面白かったです。
▲見学した市電の車両
函館市電でLTするとなると、懸念事項はいくらでも浮かび上がります。人がどれだけ入るのか、電源はどう供給するのか、騒音対策は必要なのか、そしてそもそも酔わないかどうか、先に検証する必要がありました。場合によっては、企画自体を白紙に戻す可能性もありました。そこで、事前に市電の車両を見学しに行き、車掌さんから話を伺うことにしました。
見学の結果、どの事項もそこまで問題にならないという結論に至りました。さらにこの見学会を経て、車両に搭載されているサイネージをPCにつなげてスライドを表示できることが判明しました。もちろん使わない選択肢はありません。代わりに、スライドの文字をめちゃめちゃ大きくする必要がありましたが、これはこれで面白い成約です。とにかく、この市電見学会を経て、イベントの開催が確実なものとなります。
市電見学会を経て、2度目のミーティングを展開しました。このミーティングを経て、イベントの計画をコンテンツまで深く固めて行くことになります。 開催までの具体的なスケジュールや、当日の役割分担、タイムテーブルの枠組み、集合場所、スポンサーを募るかどうかなど、多くの内容をこの時点で確定しています。
ここで、「発表時間を駅間で区切る」というアイデアを初めて共有しています。このようなアイデアは、ミーティング中にぽっとでてくるようなことはないので、あらかじめ思い立ったときに誰でも議事録に書き込めるようにするのが望ましいです。そのため函館市電LTで行った各ミーティングでは、議事録をScrapboxでまとめて事前共有することにしていました(というのも、この発表時間のアイデアは僕自身が考えていた(はず)のですが、事前にどこかに書き残さないと確実に忘れていました)。
2stミーティングに話した内容に基づいて一通り準備を進めた後、当日の動きを確認することになります。各自どのような設備を用意・持参するのかなどを話します。
このミーティングは、自分のミスにより、開催がイベントの前日に回っています(議事録には9/16とありますが、その日は人が集まらなかったため翌日に回しています)。
ここで、PCを市電のサイネージに繋げるためのhdmi to RCAケーブルがないことが発覚します。もしジャンボさんがhdmi to RCAを持っていなければ、当日は大変なことになっていました。ミーティングしかり、必要な作業を遅らせてしまうのは本当に良くないです。
ちなみに、このミーティングでやっとこさ懇親会の会場を決めました。結局ラッキーピエロになりました。ラッキーピエロは我が国の宝です。
▲搬出される市電
▲市電LTの最中の雰囲気
そしてついに、イベント当日となります。わずか2時間のために、ここまで準備を重ねてきました。
発表内容についてはMariners' Conferenceのポストでまとめています。掻い摘んで紹介すると
▲スライドの例 (kCat君の発表)
このリストを見るだけでもめちゃくちゃ面白そうに見えます。ソフトウェア設計からハードウェア、アプリ開発や開発環境、イベント運営だったり、あるいは技術とは全く関係ないロードサイドの話まで、多種多様です。中には、市電に揺られながらその場でエンジニアリングしだす人もいました。さらに、十字街あたりで飛び乗り参加する人まで現れます。
時間制限は駅間で指定しています。そのため、通常のLTイベントで用いられるタイマーは役に立たず、代わりにGoogle Mapsの位置情報がタイマーの役割を担うことになります。
市電のサイネージは結構小さいので、スライドの文字をめちゃくちゃデカくする必要があります。そのため、全体的にスピード感のある発表が多かったです。(参考: オープニング用スライド)
このイベントには未来大生だけでなく、函館市内の高校生や技術者、そして東京、札幌、旭川、九州から来た人まで、幅広い出身・立場の人たちが一同に集っています。なにからなにまで本当に面白いイベントでしたし、勉強になりました。
前述もしましたが、やはり徹底的な役割分担と議事録の事前共有は全体的に良い方向に働いたと思います。この工夫は、今後も続けていくことになりそうです。
▲connpassの募集枠
いろいろと反省点もあります。
まず、connpassページの募集枠の設定や準備のタイミングについて、いろいろ失敗しています。例えば、函館市電LTでは、運営メンバーの参加を保証するため、connpassでの申し込みは不要にしました。この試みは、余分な確認作業が減るという点では良いのですが、実際やってみると、なんとなく盛り上がりのないイベントに見えてしまっていたように感じます。運営メンバーの参加枠の扱いも含め、募集枠の設定についてはよく考えるべきでした。
また、公開のタイミングについても、改善の余地があります。こんなに異常なイベントでありながら、最終的にconnpassページの公開が10日程前になってしまったのはさすがによくなかったです。遠方からの参加者も対象にしているのなら、せめて1ヶ月前には開催日を公開しておくべきでした。
上記の失敗はどれも、「できるだけ早めに動く」ことで回避できたはずです。ミーティングを通して早急に議論して策を練っておけば...というのはそうなんですが、正直そんなことはわかりきっているのです。どうしても、心がけだけではうまくいかない感じがしています。
やはり重要なのは、スケジュール回りの作業の自動化になってきそうです。ぺるきは本当に怠惰な人間なので、ミーティングの開催を何度も後回しにしては後悔しています。カレンダーアプリもなかなか習慣にならないです。適切なタイミングで声をかけてくれる人がいれば...そうでなくとも、そういうbotがあれば嬉しいです。
▲piroさんが作ってくれたミーティング予告bot
これについて最近、動きが出てきています。開催予定のミーティングを設定して、適宜「そろそろ準備しなきゃいけないんじゃない?」と声をかけてくれるbotの構想をつぶやいていたところ、なんと知り合いの高校生のpiroさんがPythonで開発してくれました。本当にありがたい。ちょうど昨日(12/3)から運用を開始しており、早速一つ設定しています。この試みが実を結ぶかどうか、期待が膨らむところです(頑張るのは僕ですが)。
このイベントを通して、様々な方々にご協力いただきました。運営メンバーの方々はもちろんのこと、企画を快く受け入れて頂いた函館市企業局交通部の方々にも、改めて感謝申し上げます。
このイベントの企画を通して言えることは、頭のおかしい企画でも、現実的なプランさえ立てれば、あとはアイデア次第でなんとかなるということです。みなさんもぜひおかしなイベントを主催して見てください。
函館市電LTの主催には深く関わっていませんが、大学公認のLTサークル「Mariners' Conference」を運営しています。名目上は技術系サークルなので、狂っている人がたくさんいます。直近では、技術書典15にて技術同人誌Submarineを出したり(㊗印刷費回収㊗)、筑波技術大の方々と合同LTを行いました。また近頃、サークル支援金の力を借りてサークル内VPSの運用を開始しており、Webサービスの立ち上げなど部員向けに自由に扱えるようセットアップしています。技術に興味のある新入生の方、ぜひマークしておいてください。
Mariners' Conferenceへようこそ - Scrapbox
以下の2つです:
乞うご期待!